崩壊スタート
その後、多角経営の事などすっかり忘れて普通の保険の営業マンとして生きていた。
理由は2つあった。
1つは会社は毎月毎年増収を続けていたから、別にわざわざ苦労して違う方向に進んでいく必要がなかった事。
もう1つは入社して3年後には部門の責任者になり、4年後には営業全体の責任者になった。
そして、4年半位から会社でトップ営業マンになりそれから今日まで誰にもトップを譲っていない。
月単位でトップを取られた事もせいぜい6年の間に5回もない。
なので、バリバリのトップ保険営業マンに仕上がってしまったのだ。
多角化は頭にはあったが常にまぁ、別に今じゃなくてもいいんしゃない?って思っていた。
そんなある意味順風満帆な時代が続いたが、いつまでも続く事はない。
組織が崩壊していくには常に色々な事が起きていく。
まずは営業として2番目の成績を挙げていた社員の退職だった。
彼は仕事はなるべく早く帰りたい、適当、知識なしなので会社からの評価は低かった。
ただ、人当たりは良く数字を上げる意思はあったので、それなりに成績は良かった。
そんな彼は会社からの待遇と職場の人間関係に嫌になり退職してしまった。
これが今思えば崩壊の第一ステップだ。
彼の退職に伴い、今後入社予定だった人を前倒しで入って貰うことにした。
社長の昔からの友人でスカウトして来た人である。
この入社が崩壊の第二ステップだった。
まぁ、出来ない。
とにかく出来ない。
知識がとか熱意がとか以前に、人との会話が全く成立しない。
聞かれた事に対して答えられないのだ。
例えるなら家族が増えたのでミニバンを買いに来た人に、上機嫌で自分の好きなスポーツカーを勧める感じに似ている。
ピントが全く合わない。
なので、成績上がるわけもなく引き継いだお客さんも離れてしまう。
そして、タチが悪いのが自分は出来ないと思っていない。
少しづつではあるがプラス成長をしていた会社が遂にマイナスをし始めた。
第三ステップはクレーム増加だ。
もう何年もいる社員だが元々仕事が出来る人間ではなく、キャパが小さい為どんどん忘れていってしまう社員だった。
そんな社員のクレームやトラブルが2週間から3週間おきに1回入ってくる。
しかも、10段階のレベルでいうと3から7位のレベルのものだ。
これ以上のトラブルが来たらウチはもう会社運営出来なくなるってレベル。
こんな感じで契約取れない・お客さんが離れていくってレベルを超えてこれは会社の運営が今後ヤバくなるのでは?という事態になってきた。
ちなみに、この時点で危機感持ってるのは自分と役員1人だった。
ここで遂に収益のリスクヘッジを考えないと何かあったらヤバいと思い、多角化に動き出した。